和ゆらり …「大人のための和ークショップ」〜わたしだけの贅沢時間〜


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第漆回 はじめてのお点前

老舗居酒屋の小上がりで点てるお茶の味は?

ラニーニャの影響とやらで、10月末とは思えない陽気となった第漆(七)回和―クショップ。袷(裏地がついた着物)では暑かったかも‥と思えるような暖かさの中、向かったのはJR田町駅東口から徒歩5分ほどにある地酒専門店「芝の浦」さん。ここ芝浦地区で創業20年を越える老舗です。前回、「浴衣レッスン」レポートの最後でちらりと触れたのですが、今回「芝の浦」さんをお借りすることになったきっかけは、和―クショップ後の飲み会(笑)。私たちが飲んでいるお隣の席に、それはいなせな浴衣姿のおじ様が! ひょんなことからご挨拶させていただいたところ、何とそのかたが「芝の浦」の創始者であり、地元でも地域振興に大活躍されている大野会長だったのです。思わず「和―クショップを開かせてください!」と大胆なお願いをする主宰者浅井(苦笑)‥。でも心の広い大野会長はすぐさま現店長である息子さんにおつなぎくださり、、とトントン拍子に話が進んだのでございます。まことに縁は異なものでございます。。。

さて、そんなご縁から始まる和―クショップのテーマは「はじめてのお点前」。そう、「お茶」なのです。

一般的な「お茶体験」は、茶道に通じたかたに点てていただいたお茶を、作法を学びながら味わう‥という形が多く、自らお茶を点てるという機会はそうそうないもの。でも、今回はなんと参加されたお一人ずつにお茶筅を振って、お茶を点てていただくという趣向です。しかも、居酒屋さんの小上がりで。

せんせいにお迎えしたのは坂井宗季さん。形式だけが先走り、堅苦しく難しく思われがちなお茶をもっとカジュアルにとらえることで、茶道が本来持つ「おもてなし」の心を伝えていきたいという熱い思いをお持ちです。そんな坂井さんに手ほどきいただき、美味しいお茶の世界にいざ!

まずは「エア点前」にて肩ならし

渋いグレイの縞の着物に鮮やかな臙脂の帯が素敵な坂井せんせいに、お茶の心得やお道具のお話を伺った後、いよいよ茶筅を持っておけいこの開始。まずは、お抹茶を入れずにお湯だけで行う「エア点前」⇒まさか、こんなところでエアが出てくるとは‥(笑) お茶碗を温めるのと、茶筅の穂先を柔らかくして点てやすくするのが目的ということですが、何よりの目的は参加者さんの肩に入ってる力を抜くことかも‥。シャカシャカと楽しい音が広がり、お茶筅が振られていきます。「最初は一の字を書くようにしてくださいね」。坂井せんせいの声が響きます。手首に力を入れずに、肘から先の腕で点てる気持ちで茶筅を振るのがコツなのだそうです。

美味しいお菓子もお茶の楽しみ

肩ならしが終わった後、いよいよお抹茶を入れてお茶を点てていくのですが、おっとその前にお茶に欠かせないお菓子について触れておかねば! さわやかなお茶の苦味を引き立てるお菓子は、お茶の大切なパートナー。季節や行事に合わせてどんなお菓子をセレクトするかが、せんせいの腕のみせどころでもあります。本日のお菓子は主菓子とお干菓子の二種類。主菓子の「栗しぼり」は、旬の栗をふんだんに使った季節感あふれる一品。そしてお干菓子は、紅白の組み合わせが可愛い「くす玉」です。共に港区は三田にある老舗和菓子「秋色庵大坂屋」さんのもの。とりわけ、「栗しぼり」の方は、食べやすく、ほどよい大きさを坂井せんせいが考えて、今回の和―クショップ用に誂えていただいた特注品です。

ひとしきり、美味しいお菓子で盛り上がった後、いざ一服めに挑戦。神妙にお抹茶を量り、お湯を注いで‥。とたんに甘いお菓子に包まれた和やかな雰囲気が一転、少し張り詰めたような静寂が。参加者さんの気持ちがお茶を点てることにのみ注がれ、無心になるという表現がピッタリな、静かな、よい時間が流れます。お茶を点てるのはまったく初めてというかた、以前習っていたというかた、それぞれの思いを込めた自分への一服を楽しんでいただけたようです。


休日にはリビングでお点前を

その後は、お干菓子をいただいて、自分の正面に座っている「相手」に対してお茶を点て合ったり、さらに三服めに挑戦したり‥。この頃には肩の力もすっかり抜けて、皆さん、回を重ねるほど、どんどん上手になってふんわりした泡が立っていきます。なんだか難しくて高いところにあったお茶が、ぐんと親しみやすく身近になったようです。坂井せんせい曰く、「お茶碗は特別に買うことはありません。お茶が点てやすい形をしていれば、カフェオレボウルなどでもいいですよ」とのこと。ふーむ。今度のお休みにはお友達を呼んでリビングでお茶でも点ててみるのもいいかも!

写真 ◎ 長谷川 朗 / 文 ◎ 和ゆらり


老舗の風格漂う「芝の浦」の入り口。
手前の花は大野店長が毎日活けるのだそう


ずらりと並ぶ参加者さん。一人・一椀・一茶筅



お茶杓について講義中。坂井せんせい


まずはお抹茶を入れずに、エア点前で肩ならし


まろやかな栗がたっぷり!
添えられた葉っぱは、増上寺産です


エア点前で練習した成果が発揮された一服。
結構なお点前でございます!